What is Traumatic Brain Injury
外傷性脳損傷とは?
外傷性脳損傷とは、交通事故や転倒などで外から頭に強い力が加わり、脳の組織が傷つくことによっておこる疾患です。多様な事象によって引き起こされ、半身のまひや感覚障害、記憶障害など生涯にわたる障害をもたらすことも多く、日本での頭部外傷患者の有病率は10万人あたり474人と推定されております。
外傷性脳損傷は、脳に加速もしくは減速力が加わり受傷部直下に損傷をきたす直撃損傷(ちょくげきそんしょう)と、衝撃が加わった反対側の場所に生じる対側損傷(たいそくそんしょう)があります。前頭部に衝撃を受けた場合、ほとんどは、前頭葉や側頭葉に直撃損傷をきたすことが多く、対側損傷をきたすことは稀です。一方、後頭部を受傷した場合、前頭葉や側頭葉に対側損傷を生じることも多く、対側損傷は直撃損傷に比べ、脳の損傷の程度が大きいことが知られています。
外傷性脳損傷とひとくくりに言っても、直接的な力が加わり脳出血やくも膜下出血のように画像検査で診断しやすいものから、脳が揺さぶられて間接的に衝撃を受けて生じる微小な損傷まで、様々なものがあります。また、衝撃が頭部に加わった直後に生じるダメージ(一次性脳損傷)と、その後に起こる脳内の出血や腫れ、あるいは血流が一時的にさえぎられることが引き金となって生じる二次的なダメージ(二次性脳損傷)に分けることができます。ダメージの原因としては、若い人では交通事故やスポーツ、あるいは労働災害などが多く、高齢者では転倒や転落などがあります。
症状としては、脳の中で運動機能をつかさどる部分がダメージを受けた場合は手足が麻痺したり、めまいが起こったりする場合がありますが、多くは“高次脳機能障害“といって、記憶の障害や、言葉が出なくなる、行動や感情のコントロールが難しくなるなどの障害が現れて社会生活に支障をきたすことがあります。高次脳機能障害に対しては、リハビリテーションや訓練が治療の中心になりますが、行動や感情のコントロールが難しく、日常生活に影響を及ぼすほどに重篤な場合は、抗うつ剤・抗精神薬・抗てんかん薬・抗不安薬・睡眠薬等が用いられることもあります。
最終的にどの程度まで回復するかは、脳損傷の程度、年齢、意識障害の長さ、記憶障害の重症度などによって変わります。回復の期間においても受傷後6か月以降は回復が少ないものの、1年までは神経学的回復がみられるなどの報告があります。しかし、残念ながら重い後遺症が残る場合もあり、脳機能を回復するための根本治療の登場が待ち望まれています。